鰻養殖の技術革新:飼育水槽と自動給餌システムが拓く未来

■はじめに

鰻は日本の食文化に深く根付いた食材ですが、近年その存続が危ぶまれています。今回は、絶滅の危機に瀕している鰻を守るための養殖技術の最新動向についてお伝えします。

■鰻養殖の現在

2014年にニホンウナギが絶滅危惧IB類としてレッドリストに掲載されたことを受けて、水産庁は2050年までに主要養殖対象種の人工種苗比率を100%にする目標を掲げました。産学連携で精力的に研究開発が進んだ成果として、ニホンウナギの養殖では近年、目覚ましい技術革新が生まれています。 特に鰻を育てる飼育水槽の改良、そして自動給餌システムの革新により、長年の課題であったウナギの人工種苗生産の効率化とコスト削減が進んでいます。

■飼育水槽の進化:コスト削減と生産効率向上

鰻の養殖において、飼育水槽における環境は重要な要素となっています。 従来の水槽ではコストと生産効率の両面で課題がありましたが、近年、様々な形状の水槽を用いた実験を重ね、生残率に優れる20Lハーフパイプ型水槽の開発が行われました。新型水槽は、従来型に比べてコストを75%削減することに成功しています。さらに、水槽の構造と運用方法の最適化により、生産効率が大幅に向上しました。その結果、1水槽あたりの生産尾数は2016年度の250尾から2023年度には1000尾へと4倍に増加しています。

■自動給餌システムの導入:省力化とコスト削減

仔魚の飼育では、1日に複数回の給餌が必要で、人件費が大きな負担となってきます。しかし、こちらも照明と注水制御を連動させた自動給餌装置の開発により、長期飼育が可能になりました。また装置の機能を必要最小限に絞り、廉価版装置を設計したことで、装置のコストを70%削減することに成功しました。

■鰻について知ろう

鰻を育てる飼育水槽の改良、そして自動給餌システムの革新により、ウナギの人工種苗生産における安定した省力化が実現しつつあります。しかし、天然種苗と比較すると、人工種苗の生産コストはまだ高い状況です。2024年8月現在、天然種苗が1尾あたり約180~600円であるのに対し、人工種苗は1,800円程度となっています。

今後は、これらの新技術をさらに改良し、天然種苗に匹敵するコストで、安定的に人工種苗を生産できるようになれば、鰻の資源保護に大きく貢献できると期待されます。持続可能な鰻養殖を実現するために、私たちができることは、鰻の生態の現状や養殖技術について関心を持ち、知っておくことです。
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    鰻の養殖技術は日々、進歩しています。
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    鰻を食べるのはもちろん、養殖についても知ってみてください。