■鰻養殖業の現状
日本の食文化を代表する食材である鰻。しかし、その生産は2020年代から99%以上が養殖の鰻となっています。
しかし、これらは完全養殖ではなく、稚魚となる天然のシラスウナギを獲って育てたものとなります。
そのため、現在の鰻養殖業は天然資源への依存度が高く、持続可能性に課題があります。
また、稚魚の供給が自然資源に左右されるため、年によって生産量が大きく変動してしまいます。シラスウナギの漁獲量は年々減少しており、持続可能性の観点から課題となっている
この状況は、安価で品質の良い鰻を安定的に供給するために、技術革新の必要性が浮き彫りになっています。今回は、鰻の完全養殖の普及に必要な技術革新について触れていきたいと思います。
■養殖業における、AIとIoTがもたらす新たな可能性
近年AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット化)の導入により、鰻養殖の効率化や生産性の向上が期待されています。
産学連携による技術開発も進んでおり、2023年11月には、近畿大学水産研究所が人工種苗から仔魚を育てることに成功し、完全養殖を達成したことがニュースになりました。
この技術革新は、データ分析や自動化によって、より効率的な養殖方法の確立に寄与しています。例えば、水質や餌の最適化、成長過程のモニタリングなどがデジタル化され、持続可能で高品質な鰻の生産につながっています。
■技術進化による未来の養殖業 完全機械化の成功例
技術の進化により、養殖の機械化への道のりが着実に見えてきています。
例えば、稚魚の選別作業の自動化があげられます。近畿大学水産研究所では、産学提携で「稚魚自動選別システム」の実証実験が進んでおり、これまで目視と手作業に頼っていたマダイの稚魚の選別作業を、画像解析とロボット技術を利用することによって人的負担が減少しました。
他にも、水中カメラを用いた養殖魚の摂餌状況の監視や、データ分析による給餌量の最適化などが行われており、これにより餌代の削減や生産効率の向上が期待されています。
これらの技術は、養殖業の未来像を大きく変え、より持続可能で効率的な生産体系の構築に貢献しています。
■終わりに
AIとIoTの活用は、鰻養殖業における持続可能な食文化への大きな一歩を意味しています。
技術革新により、生態系への影響を最小限に抑えつつ、安定的かつ高品質な鰻の供給が可能になることが期待されます。これにより、私たちは持続可能な食文化の実現に向けて前進することができます。技術の進歩と共に、鰻養殖業の新たな未来が切り開かれていくことでしょう。