■レプトセファルスとは鰻でいう幼生の形態のこと
鰻は土用丑の日を中心に、蒲焼きやうな重など、古くから日本人に愛されてきた魚です。現在私たちが食べている鰻は、その99%がシラスウナギを採捕して育てた養殖の鰻です。
鰻の幼生は成体とは大きく見た目が異なり、楕円形の身体つきで白く透き通った色をしています。この形態(段階)をレプトセファルス(レプトケファルスともいう)と呼びます。レプトセファルスは人間でいう赤ちゃんの中間の時期のことで、さらに成長するとシラスウナギになります。シラスウナギは非常に高値で取引され、その貴重さからシラスウナギは「白いダイヤ」と呼ばれているのです。
※シラスウナギは、漁業権や漁業許可等に基づかずに採捕することが禁止されています。
レプトセファルスという名前の語源はラテン語で「Lepto (小さい)」+ 「Cephalus(頭)」つまり小さい頭という意味から来ていると言われています。ちなみに、地域によって「レプトセファルス」「レプトケファルス」と呼び方が少しだけ変わりますが、これはどちらも正しく、英語読みかラテン語読みかで変わってきます。一般的には英語式の発音である「レプトセファルス」が多く使われています。
■レプトセファルスの餌は?
私たちがよく知っている、黒くて長い鰻の形とレプトセファルスの形は全く異なります。それは、レプトセファルスが成長するにつれて大きく体のつくりを変えるからです。
そのため、レプトセファルスが食べる餌も大人の鰻とは異なります。近年までレプトセファルスが自然界で食べる餌は、謎に包まれていましたが、何人もの海洋学者の研究で判明したのが、レプトセファルスの餌は「マリンスノー」と呼ばれる海にただよう動植物プランクトンの死骸を主体とする有機物ではないかということです。これらを養殖で活用するには技術的に困難です。現在では、にわとりの卵の黄身を原料にした液体状飼料での育成の成功や、令和4年2月には新たに開発された乾燥飼料でシラスウナギへの育成が成功したことが発表されるなど、少しずつ完全養殖の実用化の道へと進歩してきています。
■「白いダイヤ」の採捕に頼らない、鰻の完全養殖に向けて
ニホンウナギは世界的にもレッドリスト(絶滅危惧種)として掲載され、その絶滅が危ぶまれています。
近年では養殖で育てた鰻の卵から生まれた赤ちゃんを大人のサイズまで育てる、完全養殖にも成功しています。まだ完全養殖の鰻を市場で販売するにはコストと時間がかかりますが、その技術も着実に進歩しています。完全養殖での最も大きな問題は、鰻一匹あたりを養殖するために掛かるコストですが、それも産学連携を行うことで、近年、大幅に減少し、天然のシラスウナギを採捕して育てるコストに少しずつ近づいています。
鰻はまだまだ謎の多い生き物ですが、少しずつ解明されてきています。今後、鰻の完全養殖や天然の個体数を増やす研究が進み、よりたくさんの方に身近に鰻料理を楽しめる日も近いのかもしれません。