養鰻場日記

川にもう鰻はいない? 天然鰻の現状を知る

 

かつて、日本の川を悠々と泳いでいた鰻。しかし、近年その姿を見かけることはめっきり減ってしまいました。一体何が起こっているのでしょうか?

川から消えた鰻の秘密

鰻は海で生まれ、川で育ち、再び海に戻って産卵するという特殊な生態を持つ魚です。

川を遡上するには、障害物なく自由に移動できる環境が不可欠です。ところが、ダムや堰などの建設によって川の連続性が失われ、鰻の住処が激減してしまったのです。さらに、鰻は昼間は岩陰や穴などに隠れて過ごす習性があります。しかし、コンクリートで覆われた川では、そのような隠れ場がなくなり、生存が難しくなってしまったのです。

激減する天然鰻

私たちの食卓に並ぶ鰻の99%以上は、稚魚であるシラスウナギを捕獲し養殖したものです。

一方、天然鰻の成魚の漁獲量は激減しています。1960年代には年間3,000トンもの量を誇っていた漁獲量は、2023年にはわずか5.6トンまで減少してしまいました。これは、各地域で漁獲規制が行われた影響もありますが、日本で採れる天然鰻の数が明らかに減少していることを示しています。

近年では環境保護の取り組みや完全養殖の研究も

しかし、絶望的な状況ばかりではありません。近年では、鰻の減少を食い止めるための様々な取り組みが行われています。

たとえば、ダムに魚道を設置したり、人工的な産卵場を作ったりすることで、鰻が海と川を行き来しやすくなるように環境を改善しています。

また、2023年にはついに鰻の完全養殖に成功。今後はコスト削減に向けて研究が進められており、将来的には天然鰻に頼らずとも、安定的に鰻を楽しむことができるようになるかもしれません。

日本の食文化を守りましょう

鰻は古くから日本の食文化に深く根付いてきた存在です。しかし、このまま何も対策を講じなければ、その文化は失われてしまうかもしれません。
天然鰻の減少は、単に食文化の問題ではありません。豊かな自然環境の維持や生物多様性の保全にも関わってきます。

私たち一人ひとりが鰻の現状について理解し、できることから行動することが大切です。たとえば、川遊びや河原でのバーベキューの際には、川を汚さないように心がけたり、環境保護活動に参加したりすることができます。未来の世代にも、日本の川を悠々と泳ぐ鰻の姿を見せるために、私たち一人ひとりが鰻の現状と未来について理解を深めておく必要があるのです。



▲ 鰻のおいしさを、次の世代にも伝えたい。

▲ 現在の養殖鰻は、シラスウナギを採捕して育てています。